野球はツーアウトから

dabchan

2015年02月22日 23:09

そんなわけで迎えた静岡県中学選抜野球大会。
我ら細江中学はじつに6年ぶりとなる県大会。
だが45回を数える由緒ある大会で過去に17回の出場があり優勝経験もある言わば伝統校なのである。




会場となる島田球場は学童野球時代、全国大会出場を決めた思い出の地だ。
会場に到着し、グランドを見渡すとあの時の事を鮮明に思い出し、歓喜に沸いた学童優勝に目頭が熱くなった。



事前の抽選会で開幕戦カードを引き当てていた。
相手は函南東。
東部の中学であり事前情報は全くと言ってなかった。

自軍は後攻。

先発エースの亮平は立ち上がりに不安を抱いていた以前のピッチングとは違い、ここ最近は立ち上がりがいい。
しかしストレート主体のピッチングにアッサリ合わせられ1点を献上。
それでも要所はキッチリおさえるまずまずのピッチングだ。

一方、自軍も1回裏に制球のさだまらない相手ピッチャーに対しエラーとフォアボールから1点を返す。

その後は4回まで0行進。

尻上がりに調子をあげてきた相手ピッチャーに対し、再三のチャンスを得点に出来ない細江中学。
明らかに苛立ちが見える。

5回。自軍のエラーからランナーを進められ、サード強襲ヒットで遂に勝ち越されてしまう。


イヤなムードで迎えた最終回。
打順は1番から。
しかし見逃し三振…
続く2番もレフトフライに倒れ後がなくなった。
3番。ピッチャー亮平。
好投を続けてきた亮平もツーストライクに追い込まれ万事休すか…
誰もが諦めた。監督ですら諦めていた。

思い出の地を苦い思い出で塗り替えてしまうのか…
そんなことが頭をよぎってしまった。


ところが!

なんとデッドボール。
一瞬だけ望みが見えた。しかしこの死球が後にとんでもない結末に結びつく。


そして4番。
最終回のこの場面、小僧に打順が回ってきた。
ランナー帰れば同点、1本でればサヨナラ。
カウントは1B2Sに。追い込まれた。

ここで自らタイムをかけた。

バッターボックスを外し後ろを振り返り大きく深呼吸をし相棒のバットを見つめた小僧。
覚悟を決めたようだ!
軽くジャンプし再び打席に戻る。

その際、本来より半歩前に構えた。
後に聞いた話ではタイミングが合ってなかったから前に出たと…

次のボールを迷いもなく振り抜いた!

快音とともにライナー性の打球はグングン伸びレフトの遥か頭上を越えた。

ボールはワンバウンドした後にスタンドに飛び込んだ。


ついてない!

エンタイトルツーベース。

確実に1点は返し同点だと思っていた。

ベース上でガッツポーズする姿にガッツポーズで答えるも内心複雑な心境だった…


こうなりゃもう続く5番翔太に全てを託すしかない。

しかしこの日の翔太は絶好の場面でことごとく凡打に倒れていた。
カウントは2ー2。
声援はなりやまない。

一瞬、翔太の顔つきが変わったかのように思えた次の瞬間、振り抜いたバットから遂に快音が聞こえた!
打球は右中間へ。
「落ちろ!落ちろ‼︎」と叫んだ。

白球が地面に落ちた瞬間、頭の中が真っ白になった。

亮平生還、続く小僧が不器用なヘッドスライディングでホームイン!


サヨナラだ!


抱き合って喜ぶ子供達。
スタンドの父兄は狂喜乱舞であった。


劇的なサヨナラゲーム





完全にあきらめていた。
7回ツーアウトまで無安打に抑えられていた打線がたった2本のヒットで試合をひっくり返したのだ。


野球はツーアウトから…
よく聞くセリフだ。
しかしまさか自分達が…

絶対にあきらめない…
チームとしての気持ちが「最高の奇跡」としてあらわれた瞬間だった。



試合後、照れ臭そうに取材を受ける小僧(笑)
何を喋ったんだか?

そんな姿を横目にドッと疲労感が出た父兄はタバコに火をつけ試合を振り返る…


まだ初戦。

厳しい闘いは続く。

しかしチームは「あきらめない」という武器を手に入れた。


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